建設現場や工事現場でよく見かける「足場」ですが、実は豊富な種類があることはあまり知られていません。
たくさんの職人たちが安全に作業するスペースとして作られる足場は、
建設現場の言わば脇役のような存在です。
仮設された足場は、役目を終えるとあっという間に撤去されます。
普段の生活ではあまり触れる機会のない足場について、今回はくさび足場などの種類をご紹介します。
足場にはどんな種類がある?
足場には実に豊富な種類があります。
枠組足場、吊り足場、丸太足場など、たくさんの種類があるのですが、
特に重要な足場は3つの種類に分けられます。
①くさび足場
足場の中でも代表的な存在として知られるのは「くさび足場」です。
くさび足場には様々な名称があり、ビケ足場やくさび緊結式足場などとも呼ばれています。
くさび足場が支持される背景には「組立のしやすさ」が挙げられます。
組立も解体も非常にスムーズに行えるので、重宝されている足場なのです。
なぜくさびと呼ぶかというと、
部品の組み立ての際には「くさび」と呼ばれる部品で支柱を連結するためです。
支柱はポケットに差し込んで、ハンマーで打ち込んでいくだけで固定し、どんどん組み立てることができます。
様々なメーカーがくさび式の足場を販売しており、低層~中層の建設現場を中心に使用されています。
また、くさび式の足場は汎用性に優れているので、
イベントの仮設など撤去を急ぐ現場でも頻繁に使われています。
人気の野外フェスなどでも、裏ではくさび足場が大活躍しているのです。
②単管足場
単管足場は単管パイプを使用した足場のため、このように呼ばれています。
単管パイプとクランプを軸にして組み立てる仕組みの足場で、足場の組立てにパターンが多いタイプです。
狭いところでもクランプを使って応用が効くため、
低層の建築現場や隣接住居とのスペースが少ない現場などに使われます。
比較的組立が簡単な足場などで職人にも好まれており、よく見かけることができる足場です。
基本的な構造は単管パイプやクランプの他に、ジョイントや足場板を使います。
③吊り足場
高所の作業における定番の足場は「吊り足場」と呼ばれています。
単管足場を活用することもあり、基本形は吊り下げて使います。
土木工事の現場で使われることが多く、組み立てる作業は難易度が高い足場です。
①、②でご紹介した足場は地上から組み立てて作っていきます。
一方の吊り足場は異なり、上から吊り下げて広げていくことで組み立てます。
横に広げて吊り下げていくことができるので、橋梁工事などの広範囲の高所作業向けの足場です。
手摺を設けて高所作業でも安全性を十分に確保できます。
3つの有名な足場についてご紹介しました。
足場といってもたくさんの用途や種類があり、ユニークさもあります。
くさび足場の組立~解体の流れとは?
「くさび足場」は数ある足場の中でも使われる頻度が高い足場です。
では、くさび足場はどういう流れで組立から解体に至っているのでしょうか。
①足場の脚部を固定する
くさび足場は地面から上に向かって組み立てていきます。
最初に脚部をしっかりと固定するところから始めます。
ジャッキベースと呼ばれる鉄製のパイプの一種です。
ジャッキと聞くと車のタイヤ交換で使うイメージがあるかもしれませんが、
ここで言うジャッキベースは足場の高さを調節する資材です。
足場の最下層部を支えて固定する、屋台骨のような役割を担います。
ジャッキベースの組立が甘いと、足場全体の安全性に関わってしまうので、
しっかりと固定することが大切です。
②支柱を組み立てる
ジャッキベースで固定作業が終わったら、次は足場の柱となる支柱の組み立てをします。
支柱をジャッキベースに差し込んで、ハンマーで叩いて固定します。
この作業後、手摺の取り付けや、くさびを使って連結作業を行い、
作業を行うための作業床をつけます。
この作業がくさび足場の別名である「くさび緊結式足場」の名称の由来です。
作業床を付ける際にはブラケットという資材を使います。
ブラケットとは、金具の一種で、部品を結合するために使用されます。
ブラケットにも様々な種類があり小型のものやピン付のものなどがあります。
③ ①~②の作業を繰り返す
3つ目の工程は①~②の作業を繰り返し、高くしていきます。
建物工事の場合には作業用の足場板も増やしていきます。
外構塗装などにも使うため、建物の屋上部に達するまで組み立てることもよくあります。
くさび足場はコンパクトに片づけることができるのも作業短縮につながっています。
④解体
くさび足場を解体する際には、上層部から解体を開始します。
組み立てた作業の真逆の方法です。
手摺を外し、くさびで連結していた支柱を外し、階段を撤去し、下層部の解体に移る、という流れです。
足場の組立~解体までを簡単にご紹介しました。
足場は建物の現場では、あくまでも作業をする場所です。
しかし、人が高所で、かつ重要な工事を行う場所なので、極めて安全に作る必要があります。
設置から解体まで、常に労働災害が起きないように細心の注意を払って行うべき作業です。
落下や転落を防止し、適正な足場の組立~解体を行うために、足場に関する資格も設けられています。
くさび足場における手摺先行工法とは
くさび足場には様々なガイドラインがありますが、
厚生労働省が設けている「手摺」に関するガイドラインは特に有名です。
このガイドラインは現場に関わる者の必携と言えます。
足場での労働災害は毎年多く発生しており、残念ながら死亡事故もこれまでに多く発生しています。
そのため足場の作業は危機管理が重要です。
厚生労働省はくさび足場を始めとする足場の設置には、手摺を先行して設置するように、
というガイドラインを設けています。
働きやすく安心感のある足場作りに、国を挙げて力を入れているのです。
手摺先行工法や、据置工法などがあり、設置手順についてもガイドラインが設けられています。
ただの仮設足場だから、といって安全をぬかるのは禁物です。
まとめ
今回は足場の中でもくさび足場に注目してご紹介しました。
足場の組立や解体、作業板での作業は危機管理が重要です。
転落や落下が起きないように、安全性の高い足場を使う必要があります。
足場に関しては資格やガイドラインも多数設けられており、
きちんと学ぶことで労働災害を未然に防ぐことができます。
働きやすく、安全性の高い足場を作ることは現場に携わる者の責務です。