建設現場を支える足場は、危険と隣り合わせの作業です。
そのため、正しい知識と経験を身に付けて安全に作業を行う必要があります。
そこで、「足場の組立て等作業従事者特別教育」と呼ばれる教育制度が
労働安全衛生法に基づいて義務付けられています。
この記事では特別教育の概要や必要性について紹介します。
足場組立て等作業従事者特別教育の概要
足場での作業は墜落や、物の落下などが発生しやすく重大な労災事故を招く可能性があります。
そこで、平成27年以降は足場の組立てや解体、
変更に関わる作業従事者は特別教育を受けることが義務付けされました。
労働安全衛生規則に沿って行われている教育です。
いわゆる建設現場における足場業務に関わる方なら全て受ける必要があり、
簡易的な脚立のような足場に関わる場合でも特別教育は修了する必要があります。
若手の方から外国籍の方も一律に受ける必要があるので注意が必要です。
受講をするにはどうすれば良い?
足場組立て等作業従事者特別教育を受けるには、3つの方法があります。
web講座の受講
足場業務にすぐに従事する場合には、手軽に受講が出来るweb受講がおすすめです。
動画を使って受講が出来るので、自宅や職場で受講することが出来ます。
講習会の日程を待たずに受講できるのが魅力ですが、
受講終了時にeラーニングテストを受ける必要があるので注意しましょう。
労働技能講習協会の受講
一般社団法人労働技能講習協会は、
ガス溶接や有機溶剤の講習など様々な労働技能講習を実施している団体です。
こちらの団体でも特別教育の受講が可能です。
最近では増加するベトナムからの労働者向けに、通訳付きの特別教育も開催しています。
また、企業の求めに応じて出張講座も開設しており、
足場への作業従事者を多く抱える企業が活用しています。
建設業労働災害防止協会
全国に支部がある建設業労働災害防止協会でも特別教育の講習を実施しており、
多くの方が講習を受けています。
最もポピュラーな受講先です。
特別教育の講習代も一番安いのもあり、大変好評です。
以上のように3つの講習先がありますので、忘れずに受講しましょう。
すでに足場の現場にいる方は3時間での講習、今から足場に携わる方は6時間の講習です。
短縮講習の場合は条件があり、事業者の証明が必要となるので注意しましょう。
どういった内容の講習を受けるの?
足場に携わる方が受講する足場の組立て等作業従事者特別教育ですが、
どういった内容の講習を受けるのでしょうか。
特別教育は足場の入門編のため、実技講習はありません。
学科講習のみ受講します。
学科内容や受講資格は次のとおりです。
学科内容及び受講資格
①足場及び作業の方法に関する知識:こちらは3時間受講します。
②工事用設備、機械、器具、作業環境等に関する知識:こちらは30分受講します。
③労働災害の防止に関する知識:こちらは1時間30分受講します。
④関係法令:こちらは1時間受講します。
特別教育の受講内容は足場の入門編と労災に関する知識です。
どちらも作業従事者として知っておかねばならない内容なので、しっかり学ぶようにしましょう。
受講資格は満18歳以上です。
建設現場では中学校卒業後に作業従事者として働く方も多いですが、
労働基準規則により危険な足場作業には満18歳になるまで従事できません。
しかし、受講自体は可能で、受講が修了している場合には18歳になると修了証が発行されます。
足場に関するその他の資格はある?
足場の組立て等作業従事者特別教育は足場のあくまでも入門編のため、
その他にも足場に関する資格が用意されています。
では、どのような資格があるのでしょうか。
足場作業の現場には労働安全衛生法の定めにより、
「足場の組立て等作業主任者」が現場の指導を行うという必要があります。
足場の組立て等作業主任者は、足場の高さが5m以上の現場作業の際に指揮をする役を担っています。
有資格者が居ない場合に5m以上の足場組立てを実施するのは法令違反となりますので注意しましょう。
では、足場の組立て等作業主任者はどのように受講すれば良いのでしょうか。
作業主任者の資格は次のような受講資格が設けられています。
足場の組立て等作業主任者の受講資格
下記①、②のいずれかを満たしていると受講ができます。
①足場の組立て、解体または変更に関する作業に3年以上従事する
②大学や高等専門学校、高校において土木や建築または造船に関する学科を先行して卒業し、
2年以上足場の組立て、解体又は変更に関する作業に従事する
この資格を見てもわかるように、作業主任者は実務経験が必要です。
まずは特別教育を受けて足場の作業に従事し、
条件をクリアした時点で作業主任者を受講することでスキルアップができます。
先々も見据えて資格取得を目指しましょう。
特別教育の際の注意点
労働災害の中でも足場に関する現場は事故発生が多いことで知られています。
しかし、事前にしっかりと教育を受け、足場に心して臨むことで労災事故は減らすことが可能です。
では、足場の組立て等作業従事者特別教育の受講の際には注意点はあるのでしょうか。
基本的に特別教育の免除期間は平成27年7月1日まで、となっているので
ここ最近で足場に近しい仕事を始めた方は免除になりません。
速やかに6時間の講習を受ける必要があります。
また、特別教育はみなさんが思っている以上に対象者が広いのです。
例として、足場に実際には上っていなくても、
解体に従事している人なども対特別教育の対象となるため受講が必要です。
但し、地上又は堅固な床上における補助作業は含まないので、この辺の線引きは難しい側面があります。
しかし、現場にいるとつい手伝ってしまう可能性もあるので、
足場に関わる以上は基本的には全員受講することが望ましいでしょう。
また、足場に関する設置や解体は足場の専門業者や建設関連の企業が多いですが、
それ以外の業種でも足場に関する作業を行う場合には受講しなければなりません。
特に関連職種である外壁関連の仕事やとび職の方は
特別教育の受講が漏れる可能性があるので十分注意しましょう。
技能を高め、安全な作業従事者を目指そう
今回は足場に関する資格に関して、「足場の組立て等作業従事者特別教育」をメインにご紹介しました。
足場に関わる以上、しっかりと教育を受け技能を高め、
安全な作業従事者を目指すことは責務と言えるでしょう。
講習や資格は労災を防ぐ手助けにもなるので、忘れることなく受講をすることが大切です。